第5回通信指令シンポジウム
実行委員長 阿南 英明
(神奈川県理事(医療危機対策統括官))
第5回通信指令シンポジウム
実行委員長 阿南 英明
(神奈川県理事(医療危機対策統括官))
この度、第5回通信指令シンポジウムの大会長を拝命いたしました神奈川県理事の阿南英明です。会を開催させていただくにあたり、一言ご挨拶を申し上げます。
通信指令分野における教育や情報交換の場が少ないことの課題の共有と解決を目的に、平成29年度の消防防災科学技術研究「通報内容から心停止および多数傷病者の察知と対応に関する研究」(研究代表坂本哲也)の一環として平成30年2月に第一回通信指令シンポジウムを開催させていただきました。当初は現在のように総務省消防庁や全国消防長会の後援を頂くシンポジウムの開催は容易ではなく、帝京大学の坂本哲也先生、国士舘大学の田中秀治先生、京都橘大学の北小屋裕先生の多大なるご尽力により開催を実現してまいりました。その後徐々に多くの先生方や各消防本部・局のご理解を得て、毎年全国から多くの関係者が参加する恒例の学術的議論の場へと発展し、今回で第5回目を迎えることができました。
現在、新型コロナウイルス感染症の流行により、日常生活が変容し、人と人との交流が制限されるとともに、その感染力の強さによって全国に感染者の急増をもたらし、救急医療の逼迫や消防救急への要請過多により、医療や消防関係者は疲弊を余儀なくされてきたのが現状です。2022年の第6波以降は、感染者の急増により消防機関への救急要請が増える結果になりました。救急の現場で、感染リスクに直面しながらも傷病者への対応にあたってこられた消防機関の方々の活躍があり、市民生活の安定化に重要な役割を果たされたものと思っています。
そうした中で、119番通報時における通信指令員の対応では、新型コロナウイルス感染症に限らず、種々の疾病に対応する必要があります。新型コロナウイルス感染の可能性を念頭におきながら、あらゆる対応が求められる状況が続くなかで、心停止傷病者発生時の救助者に対する口頭指導の有用性が蘇生ガイドライン等で一層強調されており、状況に応じた口頭指導が必要であります。そのため、各地で普及が進められてきた通信指令員の教育の重要性がさらに高まってきたといえます。
今回のシンポジウムでは、「感染症が日常化した時代の通信指令」を主テーマとして、全国へ情報発信することで、今後、新たな感染症の拡大の波が訪れた状況でも、確実な出動指令や適切な口頭指導の実施につながる知見を手に入れられるものと考えております。また前回同様に新型コロナ対応や映像通信システムの活用、蘇生ガイドライン2020における口頭指導など重要なトピックとして盛り込みたいと考えております。これ以外にも、大阪市で発生しました北新地での放火事件の指令記録や口頭指導の定量評価など、多くの通信指令員の方に興味を持って聞いていただける内容を盛り込みたいと考えております。
全国の通信指令員の議論と交流の場を継続していくという重要な役割を担いつつ、今回も引き続き多くのご参加を期待しております。
本シンポジウムを通じて全国の参加者に貴重な経験や新たな知見が共有され、それぞれの地域で活用していただけるような会にしたいと考えております。皆様のご参加をお待ち申し上げます。